|💥はじめに|中国が“金優遇措置”を廃止──世界のゴールド市場がざわつく
2025年11月、中国政府が金(ゴールド)に関する優遇税制の一部を廃止しました。
このニュースは、一見すると中国国内の制度変更に過ぎません。
しかし実際には、世界の金相場にも直結する重大なイベントです。
これまで中国は世界最大級の金消費国であり、ジュエリー・延べ棒・コインなど、あらゆる形でゴールド需要を支えてきました。
その中国が優遇措置を取りやめたとなれば、金の流通コストや国内価格、そして国際需給にまで波及するのは避けられません。
今回は、この「優遇措置の廃止」がどのような内容で、なぜ実施されたのか、そして現在の金相場にどんな影響が出ているのか──をKEX視点で徹底解説していきます。
|① 優遇措置とは?|中国が長年続けてきた“金の優遇”の正体
中国は長らく、金の国内流通に対して付加価値税(VAT)控除の優遇を設けてきました。
簡単に言えば、仕入れた金を販売するときに支払った税金の一部を戻してもらえる制度です。
これによって、金を扱う企業(宝飾店や貴金属商など)は実質的な税負担が軽くなり、販売価格を抑えられていました。
この優遇措置があったおかげで、中国では金のジュエリー需要が爆発的に伸び、世界の金価格を押し上げる一因にもなっていました。
しかし同時に、政府にとっては税収減となり、金輸入を通じた外貨流出リスクも大きくなっていたのです。
|② 変更の中身|2025年11月、中国が下した“税制見直し”の決断
今回の変更は、2025年11月1日付で中国財政部(Ministry of Finance)が正式に発表しました。
要点は次の通りです。
- これまで仕入れ時に課された付加価値税13%分を全額控除できた。
- 今後は控除率を最大6%までに制限。
- 対象は主に宝飾・加工・小売業者(一般消費者向けの金製品を扱う企業)。
- 投資目的の金(延べ棒やETFなど)は、引き続き優遇が維持される。
つまり、「消費・装飾向けの金」には課税強化、「投資用の金」には優遇継続という形です。
結果として、金の卸業者や宝飾店は仕入れコストが上昇し、小売価格も上がる可能性が高まっています。
一方で、投資家が取引する「純金延べ棒」「ETF」などは影響が限定的です。
|③ 背景にある3つの狙い
この決定の背景には、次の3つの目的が隠れています。
① 税収確保と財政改善
中国は不動産不況や地方政府債務問題で財政が逼迫。
金市場にまで優遇を与える余裕がなくなり、「取りやすいところから取る」方針に転じたと見られます。
② 消費バブルの沈静化
金ジュエリーは中国では贈答品や結婚の定番。
金価格の高騰とともに需要が過熱し、供給不足・転売目的の購入が増えていました。
政府はこの過熱を抑えたい意図もあります。
③ 投資市場の健全化
金ETFや延べ棒への投資は国家的にも認められており、こちらには優遇を維持。
つまり、「投資としての金」は守り、「消費としての金」を絞るという明確な線引きがなされました。
|④ 現在の金相場|史上最高圏の4,000ドル台へ
金(ゴールド)の国際価格は、現在$4,000/オンス前後で推移しています。
年初来で見てもすでに+25%を超える上昇で、史上最高圏です。
一時的には中国の発表を受けて数%下落しましたが、すぐに反発。
需給全体ではむしろ“底堅い強さ”を見せています。
・各国の中央銀行による金買い(外貨準備の分散)
・米国のインフレ長期化と実質金利低下
・地政学リスク(中東・台湾・米大統領選)によるリスク回避需要
つまり、中国の制度変更があっても、“世界全体の金買いトレンド”が支えている状態です。
|⑤ 今後のシナリオ|金価格は下落するのか?
ここからの金相場をKEX視点で整理すると、3つの方向性が考えられます。
① 一時的な需要鈍化で短期調整
中国国内の宝飾・小売業者が仕入れを抑え、短期的に需要が落ちる可能性。
結果として金価格が一時的に調整($3,800台まで下落)するシナリオ。
② 投資需要が消費減をカバー
一方で、投資家の金買い(ETFや延べ棒など)は引き続き堅調。
“消費減=価格下落”とはならず、むしろ安定的に推移する可能性。
③ 政策サイクルとの連動
米FRBの利下げ転換やドル安が本格化すれば、金は再び強い上昇トレンドへ。
その場合、“中国の制度変更は単なる小休止”となり、むしろ押し目買いチャンスとなる。
|⑥ 投資家が注目すべき3つのデータ
金価格を読むうえで、以下のデータを定期的にチェックしておくと良いでしょう。
- 中国の金輸入量(香港経由):制度変更後にどこまで落ち込むか。
- 上海黄金交易所(SGE)の取引量:国内実需の減速が見えるか。
- 中央銀行の金購入量:2025年も買い越しなら上値余地あり。
|⑦ まとめ|金は「富の保存通貨」としての地位を守り続ける
中国の優遇廃止は、確かに短期的には金需要のブレーキになります。
しかし、“金離れ”が進むというよりも、構造転換の始まりと見るべきです。
これまで「宝飾=金」だった時代から、「投資=金」へ。
これは日本や欧米がすでに歩んできた流れでもあります。
世界中の中央銀行がドルの信用リスクに備えて金を買い、個人投資家もリスクヘッジとして保有する──。 その流れが中国でもようやく「制度的に整った」と考えれば、むしろポジティブな変化といえるでしょう。
・優遇措置廃止=消費の抑制、投資の促進
・短期は調整も、長期では強気トレンド継続
・金は依然として「最後の安全資産」
そして何より重要なのは、こうしたニュースに対して「感情ではなくデータで見る」こと。
金の動きは世界経済の“裏側の温度”を映す鏡でもあります。
次回は、「金と米ドル・金利の関係」について掘り下げ、 なぜドル安=金高となるのかをKEX流に図解していきます。
















金需要が旺盛すぎて輸入増・外貨流出が続いていた中国は、ここでブレーキを踏んだ格好です。