|💥はじめに|「控除を増やす=得」とは限らない
多くの人が「控除は多いほどいい」と考えがちですが、住宅ローン控除だけは別です。
特に、私のように妻が住宅ローンを組み、夫(専業主夫)が扶養内で収入を得ている家庭では、控除のバランス次第で税金の返還額が大きく変わります。
この記事では、実際の数値(妻の年収691万円、住宅ローン残高3,900万円、私の所得110万円ライン)をもとに、
「配偶者特別控除を減らした方が得になる理由」を解説していきます。
① 住宅ローン控除の基本構造
住宅ローン控除(正式名称:住宅借入金等特別控除)は、簡単に言えば年末のローン残高の0.7%を10年間、所得税から引ける制度です。
つまり、ローン残高が3,900万円なら
3,900万円 × 0.7% = 27.3万円
これがその年に引ける所得税の上限額になります。
ただし、ここで重要なのが「所得税の金額がそれ以上にあるかどうか」。
たとえば所得税が20万円しかなければ、住宅ローン控除が27万円あっても20万円しか引けません。
これを「控除を引ききれない」と言います。 この“引ききれなさ”が、配偶者特別控除の金額に大きく関わってきます。
② 配偶者特別控除の仕組みをおさらい
配偶者特別控除とは、配偶者(この場合あなた)の所得に応じて、納税者(妻)が受けられる控除額が段階的に変化する制度です。
| あなたの所得 | 妻の控除額(900万円以下の場合) |
|---|---|
| 48万円以下 | 38万円(配偶者控除) |
| 95万円以下 | 36万円 |
| 100万円 | 31万円 |
| 110万円 | 21万円 |
| 120万円 | 16万円 |
| 130万円 | 6万円 |
| 133万円超 | 0円(扶養外) |
つまり、あなたの所得が増えるほど妻の控除額は減ります。 一見すると「控除が減る=損」と思いがちですが、 実は住宅ローン控除を引ききるためには“わざと減らしたほうが得”な場合があるのです。
③ 妻の年収691万円・住宅ローン残高3900万円のケース
実際の数字でシミュレーションしてみましょう。 妻の年収は6,918,066円、給与所得控除後の所得は5,126,259円。 所得控除の合計は1,923,446円でした。
これをもとに計算すると、妻の課税所得は次の通り:
5,126,259円 − 1,923,446円 = 約3,202,813円
この課税所得に対しての所得税額は約22万円程度。 つまり、妻の住宅ローン控除(最大27.3万円)は、全額引ききれないことになります。
④ 「配偶者特別控除を減らす」と控除を引ききれる理由
ここで、あなた(夫)の所得を2パターンで比較してみましょう。
| あなたの所得 | 妻の配偶者控除額 | 妻の所得税 | 住宅ローン控除の消化率 |
|---|---|---|---|
| 38万円 | 38万円 | 約21.8万円 | 80%(約21.8/27.3) |
| 110万円 | 21万円 | 約22.3万円 | 82%(約22.3/27.3) |
| 130万円 | 6万円 | 約22.7万円 | 83%(約22.7/27.3) |
つまり、あなたの所得を38万円→110万円に増やすことで、 妻の控除は減るものの、所得税が少し増えて住宅ローン控除をより多く使えるのです。
このように、「控除を増やす」ことが必ずしも得ではなく、 むしろ“所得税を発生させることで控除を活かす”のがポイント。
⑤ 「節税」と「控除の活用」はまったく別の話
ここで多くの人が勘違いするのが、節税=得するという思い込み。
たしかに経費を増やして所得を下げれば税金は減りますが、
それによって住宅ローン控除を引ききれなくなれば、本末転倒です。
例えば、あなたが電気代・通信費・PCなどを経費にして所得を38万円以下に抑えたとしましょう。 すると妻の控除は満額38万円になりますが、妻の所得税が下がってしまい、 住宅ローン控除を引ける枠も小さくなる。
その結果、控除のうち数万円分が“余って”しまう=使えない控除になるのです。
つまり、節税と控除の最適化はトレードオフの関係。 一方を優先すればもう一方が減る──これを意識しておくことが重要です。
⑥ 理想的な所得バランスとは?
このケースでは、あなたの所得を95万〜120万円に保つのが最適です。
- 妻の所得税が十分に発生し、住宅ローン控除を引ききれる
- あなたも扶養内(社会保険OK)
- 妻の配偶者控除は21万円〜16万円の範囲で確保
この範囲内なら、世帯全体の手取りは最も多くなります。 つまり、所得を減らす節税ではなく、「控除を引ききる所得ライン」を狙うのが真の最適化です。
⑦ 住宅ローン控除が余る場合の対処法
もし住宅ローン控除が余ってしまう場合は、次の対策が有効です。
- 夫の所得を少し増やす
→ 扶養内であればOK(110万円目安) - 医療費控除・ふるさと納税を控えめにする
→ 控除を増やしすぎると所得税が減り、控除が余る - 副業・FX利益を分散せず妻側に寄せる
→ 所得税を発生させ、住宅ローン控除を引ききれる
つまり、節税で“引けない控除”を作るより、
税金を少し払ってでも、最大限に控除を使い切る方が結果的に得です。
⑧ まとめ:税金を減らすより「家計の実効利益」を増やす
住宅ローン控除と配偶者特別控除は、表面上は別制度ですが、実際は密接に連動しています。 どちらかを増やすと、もう一方の効果が薄まる。これが「損しない税金戦略」の核心です。
- 控除を“引ききる”ためには、所得をある程度保つこと
- 節税しすぎは逆効果(住宅ローン控除を殺す)
- 理想ライン=あなたの所得110万円前後
この考え方を身につけておくと、来年以降の確定申告でも大きな差が出ます。 控除の最大化は「引くこと」ではなく「活かすこと」。 次回は、そのために知っておきたい経費・費用計上・家事按分の考え方を掘り下げます。
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